PRP育毛を行わない理由|エビデンス・限界と植毛評価
「先生のところではPRPをやっていますか?」とよく聞かれます。私の答えは、当院では現在PRP育毛を行っていない、というものです。新しい治療を拒んでいるわけではありません。現時点では男性型脱毛症に対するPRPのエビデンスがまだ一致しておらず、クリニックごとの方法もばらばらだからです。不確かな治療に時間とお金を使っていただくより、脱毛の原因、薬、植毛評価をきちんとご説明したいと考えています。
ポイント:PRPは自分の血液を採り、遠心分離で血小板を濃縮して頭皮に注入する治療です。一部の研究では初期の男性型脱毛症の補助として役立つ可能性が示されていますが、研究の規模、方法、長期データは一致しておらず、効果には個人差があります。当院は正確な診断、医師の評価のもとでの薬物治療、経過観察、植毛評価を中心としており、PRPは提供していません。PRPを検討している方は、まず脱毛のタイプと毛包の状態を確認してください。
PRPとは?なぜ薄毛に使われるのか
PRPはPlatelet-Rich Plasma(多血小板血漿)の略です。一般的には自分の血液を採取し、遠心分離で血小板の多い血漿を取り出して頭皮に注入し、成長因子が毛包を刺激することを期待します。

血小板の成長因子は組織の修復に関わるため、PRPは関節、スポーツ外傷、傷の治療に使われ、のちに薄毛にも広がりました。しかし理論上の可能性は、臨床で安定した予測可能な結果が出ることを意味しません。
男性型脱毛症に対するPRPのエビデンスは?
一部の研究では、初期の男性型脱毛症の補助として役立つ可能性が示されています。ただしこうした研究を読むと、共通する限界が見えてきます。
- 研究の多くは小規模で、追跡期間も限られている。
- 研究ごとに調製方法、注入方法、治療スケジュールが異なり、比較しにくい。
- 反応の個人差が大きく、中等度〜重度の脱毛には効果が限られる。
- PRPそのものは男性型脱毛症の標準治療として承認されていない。
そのため私は、PRPは現時点では研究段階の補助的な選択肢であり、男性型脱毛症の主要な治療ではないと考えています。
PRPの標準化が難しいのはなぜ?
| 項目 | 考えられる違い |
|---|---|
| 遠心分離の方法 | 回転数、時間、機器が異なる |
| 血小板の濃度 | 高低がばらばらで統一しにくい |
| 注入の深さと量 | 層や量が人やクリニックによって異なる |
| 治療の頻度 | 集中期と維持期の組み方が一定でない |
| 併用治療 | 薬を同時に使うかどうかで判定が変わる |

方法がそろっていないため、「何回で、どんな結果になるか」を前もってお伝えすることができません。これが私がPRPに慎重な主な理由です。
植毛前に育毛治療を受けるべきかが気になる方は、植毛前に発毛治療は必要?頭皮治療と術前評価の要点もあわせてご覧ください。
髪がよくなったのは本当にPRPのおかげ?
PRPと同時に、フィナステリドやミノキシジルなどの内服薬・外用薬を組み合わせる治療計画もあります。抜け毛が減るとPRPの効果だと思いがちですが、実際には薬が主に働いている可能性があります。
ここを区別しないと、PRPをずっと続けなければならないと思い込み、長く費用をかけながら、本当に続けるべき治療を見落としてしまいます。これは私がいちばん避けたいことです。
フィナステリドの作用と副作用が気になる方は、フィナステリドとは?男性型脱毛症の治療薬・副作用と植毛評価もあわせてご覧ください。
当院がPRPを提供しない理由
PRPを行わないのは、すべての研究を否定しているからではなく、現時点では主要な治療として日常的にお勧めできる段階にはないと考えるからです。PRPは繰り返しの注入と維持が必要なことが多く、効果が不確かだと長期的な出費になりがちです。
- 補助的な治療を中心的な治療のように見せない。
- 不確かな効果のために長く費用を払っていただかない。
- 流行の治療のために正しい診断と治療の時期を遅らせない。
- どの方法についても限界をはっきり説明する。
男性型脱毛症では、まず何を評価すべき?
治療を先に選ぶより、まず次の点をはっきりさせることをお勧めします。

- 男性型脱毛症か、それとも休止期脱毛、円形脱毛症、頭皮の病気か。
- 毛包にまだ活性があり、医師の評価のもとで薬を使うのに適しているか。
- 前頭部や頭頂部が明らかに薄いか、ドナー部の状態が植毛に向いているか。
- 薬や手術が向かない健康状態がないか。
正しい診断を得てから、薬、経過観察、植毛を決める。それが髪にとってもお財布にとっても責任ある進め方です。
植毛評価で確認する項目が気になる方は、植毛前に何を聞く?評価・グラフト数・麻酔・準備リストもあわせてご覧ください。
医師からのひとこと
流行している治療が、あなたに合った治療とは限りません。
それぞれの方法のエビデンスと限界を正直にご説明し、脱毛の原因や毛包の状態から植毛評価まで、本当に必要な方向を一緒に見つけていきます。
薄毛の治療は、多くやればよいのではなく、正しくやることが大切です。
本記事は一般的な医療情報であり、個別の診断に代わるものではありません。
医療情報の参考資料
PRPは薄毛に効果がありますか? +
一部の研究では初期の男性型脱毛症の補助として役立つ可能性が示されていますが、エビデンスは一致しておらず、効果には個人差があります。
PRPで薬や植毛の代わりになりますか? +
なりません。PRPは研究段階の補助的な選択肢で、毛包がなくなった部分に髪を生やすことはできません。
PRPに副作用はありますか? +
自分の血液を使いますが、頭皮の腫れ、内出血、痛み、感染の可能性があり、医師の評価と処置が必要です。
すでに薬を使っていますが、PRPも必要ですか? +
薬で抜け毛が安定していれば、PRPを追加する必要がないことが多いです。医師にご相談ください。
なぜ当院ではPRPを行わないのですか? +
エビデンスと標準化がまだ十分でないためです。正確な診断、医師の評価のもとでの薬、植毛評価を中心にしています。
PRPを検討する前に何をすべきですか? +
まず脱毛のタイプ、毛包の状態、植毛に向いているかを確認してから、治療の方向を決めましょう。
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本記事は呉文藝医師が監修・専門的なアドバイスを提供しています
呉文藝医師|萌髪植毛クリニック 院長
- ● 国際毛髪外科学会 ( ISHRS) FISHRS フェロー
- ● 米国毛髪外科専門医認定 ( ABHRS) 認定医
- ● 中華民国植毛医学会 ( TSHRS ) 現会長。