髪を抜くのをやめられない?抜毛症の脱毛所見・治療・植毛評価
髪を繰り返し抜き、やめたいのにやめられない場合は「抜毛症(抜毛障害)」かもしれません。意志の弱さではなく、自分の毛を抜く行動を制御しにくい状態です。抜く行為が止まれば再び生える可能性がありますが、長期的な毛包損傷が残った場合に限り、行動が安定してから植毛を評価します。
20代の女性が前髪で頭頂部を隠しながら、「緊張すると抜いてしまいます。もう植毛しかありませんか」と相談したことがあります。まず期間と現在も抜いているかを確認し、ダーモスコピーで短い毛や切れ毛、毛穴を観察しました。最初に必要なのは自責でも手術でもありません。
要点:抜毛症では、抜く行動を安定させ、毛包の回復を観察し、その後に植毛の適否を検討します。移植毛も再び抜くことがあるため、行動の安定、頭皮、ドナー部、現実的な期待を総合して時期を判断します。
抜毛症とは?単なる癖ではないのですか?
抜毛症は、自分の毛を繰り返し抜き、減らしたりやめたりしようとしてもうまくいかず、脱毛や生活上の苦痛が生じる状態です。頭髪のほか、眉毛、まつ毛、ほかの体毛が対象になることもあります。
緊張、不安、退屈を感じるときに抜く人もいれば、読書、仕事、スマートフォンの使用中に無意識に抜く人もいます。身体に焦点を当てた反復行動の一つで、非難するのではなく、きっかけを見つけて代わりの行動を身につけることが重要です。
抜毛症による脱毛にはどのような特徴がありますか?
利き手が届きやすい頭頂部、頭の片側、耳の上などに多くみられます。範囲は不規則で、円形脱毛症のように整った円形とは限りません。

範囲内には、生え始めた短い毛や異なる高さで切れた毛が混在し、頭皮が滑らかに見えないことがあります。抜いた毛を飲み込む行動があり、腹痛、吐き気、食欲低下を繰り返す場合は、追加の評価が必要になる可能性があるため早めに医師へ伝えてください。
抜毛症と円形脱毛症はどう違いますか?
どちらも部分的な脱毛を生じますが、原因と対応は異なります。次の特徴だけで自己診断せず、診察とダーモスコピーで確認してください。
| 比較項目 | 抜毛症 | 円形脱毛症 |
|---|---|---|
| 形 | 不規則で、手の届きやすい場所に多い | 円形や楕円形で境界が比較的明瞭 |
| 範囲内の毛 | 長さが不ぞろいで、異なる高さに切れ毛がある | 頭皮が比較的滑らかで、辺縁に特徴的な短い毛がみられることがある |
| 主な原因 | 繰り返し引っ張ることによる物理的損傷 | 免疫が関与する毛包の病気 |
| 主な対応 | 行動療法と、ストレスや併存症への支援 | 皮膚科での診断と治療 |
| 植毛評価 | 行動が安定し、持続する損傷を確認した後 | 病状が安定してから慎重に評価 |
急に脱毛が増えた場合は、急速に進む脱毛の主な原因と評価も参考にしてください。
抜毛症は何科を受診し、どのように治療しますか?
まず皮膚科や毛髪を扱う医師が、引っ張ることによる脱毛かを確認し、円形脱毛症、真菌感染、そのほかの頭皮疾患を除外します。行動と感情の両面に関係するため、精神科医や臨床心理士が治療に加わることもあります。

よく用いられる方法の一つが習慣逆転法です。抜きたい衝動ときっかけに気づき、拳を握る、ボールを持つなど、髪を傷つけない競合行動へ置き換えます。不安、抑うつなどが併存する場合は、専門家が個別に治療を検討します。薬を自己判断で始めないでください。家族には、常に監視するより受診を支え、非難を減らす役割が求められます。
抜いた髪は再び生えますか?
長期的な損傷や瘢痕ができる前に抜く行為が止まれば、毛周期に従って再び成長する可能性があります。変化が見えるまで数か月、元の長さに達するまでにはさらに時間がかかります。
同じ範囲を何年も繰り返し傷つけると、毛が細く少なくなり、局所的な瘢痕が残ることがあります。同じ分け目、照明、角度で定期的に撮影すると、毎日鏡を見るより経過を比較しやすくなります。
抜毛症に植毛はできますか?
評価は可能ですが、植毛は最初の対応ではありません。抜く行動が安定し、自然な回復を十分に観察した後も再生せず、毛包の持続的な損傷が確認された範囲が対象になります。

評価項目は次のとおりです。
- 抜く行動が安定し、治療やフォローが継続しているか
- 抜く行為を止めた後も自然な再生が続いているか
- 瘢痕、炎症、移植部の頭皮環境
- 後頭部と側頭部のドナー密度と毛の太さ
- 男性型・女性型脱毛症など別の原因が併存していないか
- 改善範囲への現実的な期待と、術後に移植部へ触れずに過ごせるか
回復期のかさぶた、かゆみ、新しい毛が出る感覚が、抜く衝動のきっかけになる場合があります。手術前に現在の治療チームと術後の対処法を決めておくことが大切です。植毛前の脱毛状態、ドナー部、毛質の評価もご覧ください。
どのような場合は植毛を延期しますか?
現在も抜いている、ストレス時に再発する、併存する精神的な問題が安定していない、または自然な再生が続いている場合は延期します。頭皮に炎症、傷、未治療の皮膚疾患があれば先に対応します。
植毛は抜きたい衝動を治療する方法ではありません。治療と観察を続け、より安定した状態であらためて植毛評価を行います。
医師から:まず抜く行動に対応し、その後に残った脱毛を評価します
「自分で抜いたことは分かっています」と、自分を責めながら受診する方は少なくありません。抜毛症は努力不足ではなく、適切な支援と治療が必要な状態です。
まず原因と毛包を確認し、必要な支援につなげます。行動が安定し、自然回復の範囲が明確になった後、残った損傷部に植毛が適するか、いつ行うかを一緒に検討します。本記事は一般的な医療情報であり、個別の診断に代わるものではありません。
医療情報の参考資料
- NHS:Trichotillomania (hair pulling disorder)
- MedlinePlus:Trichotillomania
- American Academy of Dermatology:Hair loss—Who gets and causes
- DuBois MC, et al. Trichotillomania and its treatment: an updated review and recommendations. Expert Review of Neurotherapeutics (2025)
- Christensen RE, et al. Recent advances in trichotillomania: a narrative review. Acta Dermatovenerologica Alpina, Pannonica et Adriatica (2023)
- International Society of Hair Restoration Surgery:A Guide to Hair Transplant Surgery
髪を抜くことは病気ですか? +
自分の髪を繰り返し抜き、やめようとしても難しく、脱毛や強い苦痛が生じている場合は抜毛症の可能性があります。単なる癖とは限らないため、まず医師が脱毛原因を確認し、必要に応じて精神科や臨床心理の支援につなげます。
抜毛症は遺伝しますか? +
家族内でみられやすい傾向はありますが、遺伝、ストレス、感情、環境など複数の要因が関係し、単一の遺伝子だけで決まるものではありません。責めるより理解と支援が大切です。
子どもが髪を抜き続けるときはどうすればよいですか? +
叱ったり繰り返し注意したりせず、どのような場面で抜くかを記録してください。小児科や皮膚科で原因を確認し、必要なら児童精神科や心理職の支援を受けます。
抜毛症で抜けた髪はどのくらいで戻りますか? +
抜く行為が止まり、毛包に長期的な損傷がなければ、数か月かけて新しい髪が見え始めることがあります。元の長さに戻るにはさらに時間が必要で、長期間回復しない場合は毛包の診察を受けてください。
植毛した髪を再び抜いてしまうことはありますか? +
あります。移植毛も抜くことができ、術後のかゆみやかさぶたがきっかけになる場合もあります。そのため、行動が安定した後に評価し、回復期の対処方法を事前に決めます。
抜毛症と円形脱毛症は自分で見分けられますか? +
どちらも部分的な脱毛を生じ、外見だけでは判断しにくいことがあります。医師が経過とダーモスコピー所見を合わせ、切れ毛、円形脱毛症、ほかの原因を鑑別します。
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本記事は呉文藝医師が監修・専門的なアドバイスを提供しています
呉文藝医師|萌髪植毛クリニック 院長
- ● 国際毛髪外科学会 ( ISHRS) FISHRS フェロー
- ● 米国毛髪外科専門医認定 ( ABHRS) 認定医
- ● 中華民国植毛医学会 ( TSHRS ) 現会長。