ポニーテールで抜け毛は増える?牽引性脱毛症のサインと回復、植毛の評価
増えることがあります。髪をきつく結んだ状態を長く続け、同じ部分の毛包を繰り返し引っ張ると「牽引性脱毛症」が起こることがあり、こめかみ、もみあげ、耳の上の生え際によく見られます。早めに気づいて髪型をゆるめれば、多くの場合は時間をかけて髪が戻る可能性があります。一方、何年も引っ張り続けて毛包が瘢痕化すると、自然に回復するのは難しくなります。
ポイント:牽引性脱毛症は、髪型・引っ張る力・期間に関係しており、遺伝によるものではありません。結ぶと頭皮がチクチクする、生え際に小さな赤いぶつぶつができる、こめかみの縁に細く短い毛しか残っていない、といった変化は見直しのサインです。初期は引っ張る力を減らすことが中心で、植毛を検討するのは毛包が瘢痕化し、範囲が落ち着いてからです。
牽引性脱毛症とは?なぜ髪を結ぶだけで抜け毛になるのか
牽引性脱毛症は、毛包に長期間引っ張る力がかかることで起こる脱毛です。髪を後ろにきつくまとめ、同じ方向に固定すると、生え際の縁の毛包に最も大きな力がかかります。最初は毛包の周りに炎症が起こり、髪が切れたり抜けたりしやすくなります。それが長く続くと毛包が次第に小さくなり、最終的には瘢痕組織に置き換わることがあります。
診察では、毎日高い位置のポニーテールで出勤する女性、何年も髪をまとめているダンサーや飲食業の方、エクステや編み込みをよくする方をよく診ます。長髪を結んでいて、こめかみが薄くなった男性もいます。多くの方が「もともと生え際が高い」「年齢のせい」と思っていますが、よく見ると、薄くなっている場所はちょうど引っ張る力が最も集中している部分です。
男性型脱毛症との一番の違いは、原因がホルモンや遺伝ではなく外からの力であることです。引っ張る力を早く取り除くほど、毛包が正常な成長サイクルに戻る可能性が高くなります。
抜け毛の原因が一つではないかもしれないと心配な方は、〈抜け毛が急に増えた?5つの主な原因と医師の検査方法〉もご覧ください。
毛包を引っ張りやすい髪型や習慣は?

大切なのは「結ぶかどうか」ではなく、どれくらいきつく、どれくらいの時間、毎日同じ位置で結んでいるかです。診察でよく見る引っ張りの強い習慣と、私がふだん提案している見直し方を表にまとめました。
| 髪型・習慣 | 力がかかりやすい場所 | 私がすすめる見直し方 |
|---|---|---|
| 高い位置のポニーテール、きついお団子、アップスタイル | 額、こめかみ、もみあげ | 低めにゆるく結び、毎日高さを変える |
| 細い編み込み、頭皮に沿った編み込み | 生え際全体と分け目の両側 | 太めにゆるく編み、生え際の縁は編み込まない |
| エクステ、接着式・クリップ式のヘアピース | 接着部分の周りの頭皮 | 装着時間を短くし、生え際に集中させない |
| カーラーをつけたまま寝る、一晩中結んだまま | 頭頂部と両側 | 寝る前にほどくか、ゆるい柔らかいゴムだけにする |
| きつくまとめた髪の上に頭巾・カチューシャ・きつい帽子 | 額の縁、耳の上 | かぶる前に髪をきつくまとめず、締めつけないサイズを選ぶ |
| 濡れた髪をそのまま結ぶ | 髪全体 | 乾かしてから結ぶ。濡れた髪は切れやすい |
縮毛矯正やブリーチなどの化学的な処理も髪をもろくするため、きつく結ぶ習慣が重なると切れ毛と引っ張りの影響が積み重なります。
カラーやパーマと結び方が重なって髪が減っていないか心配な方は、〈カラーやパーマで抜け毛は増える?切れ毛と頭皮のかぶれ、受診の目安〉もご覧ください。
牽引性脱毛症の初期サインは?
初期の牽引性脱毛症は見過ごされがちです。次のような変化があれば、まず結び方をゆるめて様子を見てください。
- 髪を結ぶと頭皮がチクチクする、突っ張る、頭痛がして、ほどくと楽になる。
- 生え際、こめかみ、耳の上に小さな赤いぶつぶつや膿をもった発疹ができる。
- こめかみやもみあげの髪が短く細くなり、とかすと縁が切れやすい。
- 生え際の一番前に細く短い毛が一列残り、その後ろが明らかに薄い(医学的に「フリンジサイン」と呼ばれます)。
- 毛の根元に白い輪のようなものがつき、とかしても洗っても取れない。根元に力がかかっているサインです。
こうしたサインが髪を引っ張る方向にだけ出ている場合は、牽引性脱毛症の可能性が高くなります。頭頂部全体が薄い、分け目が広がっているといった場合は、ほかの原因もあわせて考える必要があります。
牽引性脱毛症と男性型・女性型脱毛症、円形脱毛症の違いは?
同じようにこめかみが薄くなっても、原因が違えば対処もまったく異なります。私はまず脱毛の位置と形を見て、ダーモスコープで毛包と根元の状態を確認します。
| 比較項目 | 牽引性脱毛症 | 男性型・女性型脱毛症 | 円形脱毛症 |
|---|---|---|---|
| 主な原因 | 髪型による長期の引っ張り | 遺伝とホルモンの影響 | 免疫が毛包を攻撃する |
| よく見られる場所 | こめかみ、もみあげ、耳の上(結ぶ方向に沿う) | 男性は額と頭頂部、女性は分け目の広がりが多い | どこにでも、まだらに出る |
| 縁の特徴 | 最前列に細く短い毛が残りやすい | 生え際全体が後退する、または頭頂部が薄くなる | 境界のはっきりした滑らかな円形 |
| 頭皮の症状 | 痛み、赤いぶつぶつ、根元の白い輪 | 通常は目立った症状なし | 多くは症状なし、まれに軽いかゆみ |
| 初期の対応 | 引っ張りを減らし、炎症をケア | 医師が薬と経過観察を判断 | 医師が免疫に関わる治療を判断 |
女性型脱毛症があるうえに、きつく結ぶ習慣が長く続いているなど、両方が重なっている方もいます。その場合は両方に対処しないと、髪型を変えても薄くなり続けることがあります。
実は男性型脱毛症なのではと心配な方は、〈男性型脱毛症(AGA)とは?原因・進行度・治療法〉もご覧ください。
髪はまた生える?初期と後期の違い

髪が戻るかどうかは、毛包が残っているかどうかで決まります。引っ張りによるダメージは段階的に進むため、私は次のように今の段階を説明しています。
| 段階 | 頭皮と髪の状態 | 回復の見込み | 対応 |
|---|---|---|---|
| 初期 | 根元の炎症や痛み、髪が細く切れやすい | 髪型をゆるめると、多くは時間をかけて戻る可能性がある | 結び方を変え、必要に応じて医師が炎症をケア |
| 中期 | こめかみが明らかに薄いが、細く短い毛はまだ見える | 一部は回復しうるが、長めの観察が必要 | 引っ張りを避け続け、定期的に写真で記録 |
| 後期 | 頭皮がつるっとして光り、毛穴が少ないか見えない | 毛包が瘢痕化すると自然な回復は難しい | 範囲が落ち着いたら植毛が適するかを評価 |
髪の成長はゆっくりなので、髪型を変えてから変化が分かるまでには通常数か月かかります。その間、いろいろな育毛製品を次々に試すより、まず引っ張る力をしっかり取り除くことが何より大切です。
市販の育毛製品に意味があるのか気になる方は、〈育毛シャンプーに効果はある?成分・表示の見方と受診の目安〉もご覧ください。
毛包への引っ張りを減らす髪型の工夫は?
仕事や生活で必要なこともあるので、私は「もう結んではいけない」とは言いません。現実的なのは、同じ部分の毛包に休む時間をつくることです。
- ゆるく、低く結ぶ:結んだ後に頭皮が突っ張ったり痛んだりしないこと。痛いならきつすぎます。
- 毎日位置を変える:ポニーテールの高さや分け目を交互に変え、毎日同じ生え際を引っ張らない。
- 柔らかいヘアアクセサリーを選ぶ:布製のシュシュや大きなクリップを使い、細いゴムや金具つきのゴムは避ける。
- 頭皮を休ませる:帰宅後や休日、寝るときは髪をほどき、毛包に力がかかる時間を減らす。
- 編み込みやエクステを延長し続けない:一定期間で外して頭皮を休ませ、生え際の縁はなるべく編み込まない。
- 仕事でまとめ髪が必要なとき:きつく引っ張らなくてよいスタイルにするか、生え際に少しゆとりを残す。
ヘルメットや帽子、頭巾そのものが問題になることは通常ありません。問題は、髪をきつくまとめてから長時間押さえつけることです。
毎日のヘルメットで髪が減っていないか心配な方は、〈ヘルメットで薄毛になる?抜け毛の原因・対策・受診の目安〉もご覧ください。
受診の目安は?診察ではどう評価する?
髪型をゆるめて数か月たってもこめかみが薄くなり続ける、頭皮が何度も赤く腫れる、膿をもつ、痛む、といった場合は、自分で様子を見るだけでなく受診をおすすめします。次のような場合は早めの検査をすすめています。
- 脱毛の範囲が広がり続けている、または生え際以外にも出てきた。
- 頭皮の炎症、じゅくじゅく、かさぶたを繰り返す、またはしこりがある。
- 引っ張りによるものか、男性型・女性型脱毛症、円形脱毛症、ほかの頭皮の病気も重なっているのか分からない。
- 抜け毛とともに、だるさ、体重の大きな変化、月経不順など全身の症状がある。
診察では、髪型や仕事の習慣、抜け毛が始まった時期、家族歴をうかがい、ダーモスコープで毛穴、細く短い毛、根元の状態を確認します。判断が難しい一部のケースでは、皮膚科医が毛包の瘢痕化を確かめるために頭皮の生検をすすめることがあります。
自分の髪の状態をもっと詳しく評価してほしい方は、〈植毛前に評価すべき髪の状態は?適応・毛包・評価の流れ〉もご覧ください。
後期の牽引性脱毛症は植毛できる?

評価することはできます。こめかみやもみあげの毛包がすでに瘢痕化し、引っ張りをやめた後も範囲が落ち着いている場合、髪が自然に戻る可能性は低く、植毛がよく検討されます。植毛は、影響を受けにくい後頭部の自分の毛包を薄い部分に移し、生え際やこめかみの輪郭をつくり直す方法です。
ただし、手術の前に私が必ず確認することがあります。
| 評価項目 | なぜ大切か |
|---|---|
| 引っ張る習慣をやめているか | 植毛後もきつく結び続けると、移植した髪も同じように引っ張られる |
| 脱毛範囲が落ち着いているか | まだ広がっている場合は、原因に対処し、しばらく観察してから計画する |
| 頭皮に炎症が残っていないか | 炎症が治まる前の手術は、生着と傷の回復に影響する |
| 移植先の瘢痕の程度と血流 | 瘢痕化した頭皮は血流が乏しく、密度は分割や控えめな計画が必要 |
| 男性型・女性型脱毛症が重なっていないか | 重なっている場合は、今後の脱毛範囲と治療もあわせて考える |
| 採取部の毛包が十分か | 今回移植できる範囲と、将来に備えて残す量が決まる |
牽引性脱毛症の植毛はこめかみやもみあげが中心になることが多く、もともとの毛流れや顔立ちに合わせてデザインし、縁が硬い直線ではなく自然に見えるようにする必要があります。
女性の生え際植毛でどこまで調整できるか気になる方は、〈女性の生え際植毛はどこまで下げられる?デザインの限界と株数〉もご覧ください。
こめかみの頭皮が瘢痕化していても植毛できるのか心配な方は、〈頭皮の傷跡にも植毛できる?適応条件・生着の限界・手術計画〉もご覧ください。
医師からのひとこと
診察で多くの方が最初に口にするのは「先生、私はもともと生え際が高いんでしょうか?」という質問です。髪をほどいてもらうと、こめかみの縁に細く短い毛が一列残り、その後ろが明らかに薄くなっていることがよくあります。毎日のポニーテールで最も強く引っ張られる場所です。
私はまず、髪をゆるく結び、位置を変えて数か月様子を見ること、そして頭皮の炎症をケアすることをお願いしています。初期の牽引性脱毛症は、習慣を変えるだけで少しずつ良くなる方も多く、急いで手術を考える必要はありません。
毛包がすでに瘢痕化し、範囲も落ち着いている場合は、採取部と移植部の状態を一緒に評価したうえで、植毛が適しているか、どこまでできるかを判断します。改善が見込める部分と限界がある部分を正直にお伝えし、十分に理解したうえで決めていただけるようにしています。
本記事は一般的な医療情報であり、個別の診断に代わるものではありません。
医療情報の参考資料
- American Academy of Dermatology:Hairstyles that pull can lead to hair loss
- American Academy of Dermatology:Hair transplant
- NHS(英国国民保健サービス):Hair loss
- Billero V, Miteva M. Traction alopecia: the root of the problem. Clinical, Cosmetic and Investigational Dermatology(2018)
- StatPearls(NCBI Bookshelf):Traction Alopecia
毎日ポニーテールにすると必ず抜け毛になりますか? +
必ずではありません。きつく結ばない、毎日位置を変える、帰宅したらほどく、といった工夫をしていれば、多くの毛包は耐えられます。問題になるのは、きつい結び方を長く続ける、毎日同じ場所を引っ張る、結ぶと頭皮が痛む、といった場合です。
牽引性脱毛症は自然に治りますか? +
初期であれば、引っ張る力を取り除くことで、時間をかけて髪が戻る可能性があります。判断には数か月の観察が必要です。きつく結び続けると進行し、毛包が瘢痕化した後期になると自然に回復するのは難しくなります。
男性も牽引性脱毛症になりますか? +
なります。長髪をまとめて結ぶ、長期間の編み込み、仕事できついヘルメットや頭巾をかぶるといったことで、こめかみやもみあげが引っ張られます。男性型脱毛症もある場合は、それぞれがどの程度関わっているかを医師に見極めてもらいましょう。
エクステやウィッグピースで抜け毛は増えますか? +
増える可能性があります。接着部分やクリップが同じ場所に固定され続けると、周囲の毛包を引っ張り続けます。装着時間を短くし、接着部分を生え際から離してください。その周りが薄くなったり痛んだりしたら、まず外しましょう。
牽引性脱毛症に育毛剤は効きますか? +
最も大切なのは、まず引っ張るのをやめることです。初期で炎症を伴う場合、医師が外用の抗炎症薬や発毛を促す処方を検討することがあります。毛包が瘢痕化した後期では、外用剤で髪を戻すのは難しくなります。薬が必要かどうかは、医師が頭皮を診てから判断します。
牽引性脱毛症で植毛した後、またポニーテールにできますか? +
術後の回復期間中は髪を結ばないでください。その後は結んでも構いませんが、ゆるく、低く、位置をこまめに変えることが前提です。きつく結ぶ習慣に戻ると、移植した髪も同じように引っ張られてしまいます。
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本記事は呉文藝医師が監修・専門的なアドバイスを提供しています
呉文藝医師|萌髪植毛クリニック 院長
- ● 国際毛髪外科学会 ( ISHRS) FISHRS フェロー
- ● 米国毛髪外科専門医認定 ( ABHRS) 認定医
- ● 中華民国植毛医学会 ( TSHRS ) 現会長。