更年期の抜け毛はどうする?ホルモンの変化、頭頂部の薄毛と植毛の評価
更年期の前後に抜け毛が増えたり、髪が細くなったりするのは、多くの女性が経験する変化です。この時期はエストロゲンが減り、ホルモンのバランスが変わるため、もともとあった女性型脱毛症が目立ってきたり、睡眠やストレス、体調の変化によって一時的に抜け毛が増えたりすることがあります。どのタイプかを見極めることで、様子を見るのか、治療するのか、植毛を検討するのかが分かります。
ポイント:更年期の抜け毛は一つの病気ではありません。よく見られるのは「女性型脱毛症」と「休止期脱毛」で、両方が重なることもあります。分け目が広がり、頭頂部が少しずつ薄くなる場合は女性型脱毛症が多く、短期間に全体的に抜け毛が増えた場合は、きっかけを探し血液検査を行います。前髪の生え際が後退し、眉毛も薄くなっている場合は、まれな瘢痕性脱毛症を除外する必要があります。
更年期になるとなぜ抜け毛が増える?ホルモンの変化と毛包
毛包はホルモンの影響を受けやすい組織です。エストロゲンは髪を成長期にとどめる働きを助けますが、更年期に入ると卵巣から分泌されるエストロゲンが徐々に減り、相対的に男性ホルモンの影響が目立つようになります。遺伝的な傾向がある方では、頭頂部や分け目付近の毛包が少しずつ小さくなり、生えてくる髪も細くなっていきます。
ホルモンのほかにも、更年期に伴いやすい睡眠の質の低下、ほてりによる不眠、精神的なストレス、体重の変化、そしてこの年代に多い甲状腺の病気や貧血も、抜け毛を増やす原因になります。そのため私は診察で「年齢のせい」で済ませず、考えられる原因を一つずつ確認していきます。
抜け毛と遺伝の関係が気になる方は、〈禿頭は父方か叔父方の遺伝か?〉もご覧ください。
更年期の抜け毛にはどんなタイプがある?見分け方

同じ「髪が減った」でも、タイプが違えば対処も異なります。更年期の前後によく見られるパターンは次のとおりです。
| タイプ | よく見られる特徴 | 考えられる原因 | 対応 |
|---|---|---|---|
| 女性型脱毛症 | 分け目が広がり、頭頂部が徐々に薄くなる。前髪の生え際は保たれることが多い | 遺伝的な傾向とホルモンバランスの変化 | 医師が薬と経過観察を判断。落ち着いた後に植毛を評価できる |
| 休止期脱毛 | 短期間に全体の抜け毛が増え、洗髪やブラッシングでまとまって抜ける | 睡眠、ストレス、病気、急な減量、栄養不足など | きっかけを見つけて改善。多くは数か月で落ち着く |
| 前頭部線維化性脱毛症(瘢痕性) | 前髪の生え際ともみあげが少しずつ後退し、眉毛が薄くなることもある | 炎症で毛包が壊れる。原因は研究中 | 早めに皮膚科医の診断と治療を。落ち着くまで植毛は適さない |
| その他の頭皮・内科の問題 | 部分的な赤み、かゆみ、ふけ、だるさや寒がりを伴う | 頭皮の炎症、甲状腺機能の異常、貧血など | 検査結果に応じてもとの病気を治療 |
実際には重なっていることも多く、軽い女性型脱毛症がもともとあったところに、更年期の睡眠不足やストレスが加わり、急に抜け毛が目立つようになることがあります。
抜け毛の原因が一つではないかもしれないと心配な方は、〈抜け毛が急に増えた?5つの主な原因と医師の検査方法〉もご覧ください。
更年期の抜け毛の注意サイン:受診の目安は?
様子を見てよい変化もあれば、早めに確認したほうがよい変化もあります。次のような場合は受診をおすすめします。
- 抜け毛が数か月以上増え続け、落ち着く気配がない。
- 分け目がはっきり広がり、まとめた髪が細くなってきた。
- 前髪の生え際やもみあげが後退し、眉毛も薄くなってきた。
- 頭皮に赤み、腫れ、ひりつき、ふけ、かゆみがある。
- だるさ、寒がり、動悸、体重の大きな変化、不正出血を伴う。
- 円形に髪が抜ける、または髪が切れやすい。
タイプを早く確かめるほど、毛包を残せる可能性が高くなります。特に瘢痕性脱毛症は、毛包が壊れると回復が難しいため、早めの診断が大切です。
急に抜け毛が増えたのは季節のせいか気になる方は、〈冬に抜け毛が増えたのは季節のせい?見分けたい変化と受診の目安〉もご覧ください。
診察ではどんな検査をする?
更年期の抜け毛を評価するときは、まず月経の変化、睡眠やストレス、食事と体重、服薬や持病、ご家族に髪の少ない方がいるかを伺います。次にダーモスコープで毛包の太さにばらつきがないか、頭皮に炎症や瘢痕がないかを確認し、必要に応じて血液検査を行います。
| 検査 | 主な目的 |
|---|---|
| ダーモスコープ検査 | 毛包が細くなっていないか、太さのばらつき、頭皮の炎症や瘢痕を確認 |
| 牽引テストと抜け毛の記録 | 今の抜け毛の勢いを把握する |
| 甲状腺機能 | 甲状腺機能の亢進・低下による脱毛を除外 |
| ヘモグロビンと鉄の指標 | 貧血や鉄不足がないかを確認 |
| 症状に応じたその他の検査 | 男性化の徴候がはっきりある場合のホルモン関連の評価など |
| 頭皮生検(一部のケース) | 瘢痕性脱毛症が疑われる場合や診断がはっきりしない場合に皮膚科医が行う |
検査は多ければよいわけではなく、症状に合わせて最も考えられる原因を確かめるためのものです。
抜け毛と甲状腺の関係が気になる方は、〈甲状腺の病気で抜け毛は増える?機能亢進症・低下症の抜け毛の特徴、検査と受診の目安〉もご覧ください。
更年期の抜け毛は治療できる?治療の前に知っておきたいこと

治療できます。女性型脱毛症はゆっくり進む脱毛で、治療の目標は毛包を安定させ、細くなるスピードをゆるめ、細くなった髪の一部を太くすることです。一般的には外用薬や内服薬を使いますが、それぞれに適した方と注意すべき副作用があるため、医師の評価を受けてから処方してもらい、自己判断で購入して使うことはおすすめしません。
「ホルモンを補充すれば髪は戻りますか?」とよく聞かれます。現在の医学研究では、抜け毛だけを目的としたホルモン療法は支持されていません。ホルモン療法が合うかどうかは、更年期の症状と全身の健康状態を主に考え、婦人科医と相談して決めましょう。
| 方法 | 向いている場合 | 注意点 |
|---|---|---|
| きっかけと生活リズムの改善 | 休止期脱毛、睡眠やストレスの影響が大きい場合 | 変化が分かるまで数か月かかる |
| 外用薬 | 軽度から中等度の女性型脱毛症 | 継続が必要。初期に一時的に抜け毛が増えることがある |
| 内服薬 | 医師が適すると判断した女性型脱毛症 | 副作用と体調の定期的な確認が必要 |
| 植毛 | 抜け毛が落ち着き、採取部の条件が十分な場合 | 術後ももともとの髪のケアは続ける |
治療には根気が必要で、一定期間続け、定期的に写真で比べてはじめて効果を判断できます。
食事や栄養が抜け毛に関係するか気になる方は、〈頭皮軟化(抜け毛)を食事で改善できるか?育毛 Foods/栄養素 と医師のアドバイス〉もご覧ください。
更年期の髪を日々どうケアする?
生活習慣は治療の代わりにはなりませんが、余計な抜け毛のきっかけを減らし、髪をよい状態に保つ助けになります。
- 睡眠を大切に:ほてりや不眠で休めないときは、改善方法を医師に相談しましょう。
- バランスのよい食事:たんぱく質や鉄を含む食品を十分にとり、体重管理のための過度な食事制限は避ける。
- 頭皮をやさしく洗う:刺激の少ない洗い方を選び、熱すぎるお湯や強くこする洗い方を避ける。
- 髪への負担を減らす:高温のスタイリングや頻繁なブリーチを控え、髪をきつく結ばない。
- 適度な運動を続ける:睡眠や気分の改善に役立ち、全身の健康にもよい。
- 定期的に写真で記録:同じ明るさと角度で頭頂部を撮るほうが、毎日抜け毛を数えるより傾向が分かります。
育毛をうたう製品はたくさんあります。時間とお金をかけても改善しない場合は、まず脱毛のタイプを確かめてから続けるかどうかを決めましょう。
更年期の女性は植毛に向いている?

評価することはできます。女性型脱毛症の抜け毛が頭頂部や分け目付近に集中していて、一定期間の治療と経過観察を経て範囲が落ち着き、後頭部の毛包も十分にある場合は、植毛で分け目や頭頂部の密度を補うことができます。ただし、女性は採取部も一緒に薄くなっていることがあるため、術前の評価が特に重要です。
手術を決める前に、次の点をあなたと一緒に確認します。
| 評価項目 | なぜ大切か |
|---|---|
| 脱毛のタイプが確定しているか | 活動期の瘢痕性脱毛症は植毛に適さず、まず落ち着かせる必要がある |
| 抜け毛が落ち着いているか | まだ速く進行している場合は、治療と経過観察を優先するほうが安全 |
| 採取部の毛包が十分か | 女性は採取部も薄くなることがあり、補える範囲が決まる |
| 持病と服薬の状況 | 血圧、血糖、抗凝固薬などは術前にあわせて評価が必要 |
| 密度への期待 | 実際の条件と術後の仕上がりのずれを防ぐ |
| 術後も自分の髪のケアを続けられるか | 植毛でもともとの髪の変化は止まらないため、経過観察と治療は続く |
女性の植毛は、刈り上げない方法や部分的な刈り上げで行えることが多く、術後の回復期間が目立ちにくくなります。実際の方法は脱毛の範囲と採取部の条件によって決まります。
女性の植毛でどこまで変えられるか気になる方は、〈女性の生え際植毛はどこまで下げられる?デザインの限界と株数〉もご覧ください。
植毛の前にほかに何を評価すべきか気になる方は、〈植毛前に評価すべき髪の状態は?適応・毛包・評価の流れ〉もご覧ください。
医師からのひとこと
診察では、50歳前後の女性から「先生、年齢のせいでこのまま髪が減り続けるしかないのでしょうか?」と聞かれることがよくあります。そのやりきれない気持ちはよく分かりますが、更年期の抜け毛は、ただ受け入れるしかないものではありません。
私はまず、女性型脱毛症なのか、一時的な休止期脱毛なのか、特に注意が必要な瘢痕性脱毛症なのかを一緒に確かめ、睡眠、ストレス、栄養、甲状腺などのきっかけを探します。原因が分かり、生活を整えて治療を続けることで、抜け毛が少しずつ落ち着いていく方も多くいます。
抜け毛が落ち着き、採取部の条件も十分であれば、植毛でどこまで改善できるかをご相談します。密度を補える部分と限界がある部分をはっきりご説明し、理解したうえで決めていただけるようにしています。
本記事は一般的な医療情報であり、個別の診断に代わるものではありません。
医療情報の参考資料
- American Academy of Dermatology:Thinning hair and hair loss: Could it be female pattern hair loss?
- NHS(英国国民保健サービス):Symptoms of menopause and perimenopause
- NHS(英国国民保健サービス):Hair loss
- Kamp E, Ashraf M, Musbahi E, et al. Menopause, skin and common dermatoses. Part 1: hair disorders. Clinical and Experimental Dermatology(2022)
- Fabbrocini G, Cantelli M, Masarà A, et al. Female pattern hair loss: A clinical, pathophysiologic, and therapeutic review. International Journal of Women’s Dermatology(2018)
更年期の抜け毛は自然に治りますか? +
タイプによります。睡眠不足やストレス、体調不良による休止期脱毛であれば、きっかけが改善すると数か月かけて落ち着くことが多いです。女性型脱毛症はゆっくり進行するため、早めに医師の評価を受けることをおすすめします。
ホルモン補充で更年期の抜け毛は改善しますか? +
現在の研究では、抜け毛だけを目的としたホルモン療法は支持されていません。ホルモン療法が必要かどうかは、更年期の症状と全身の健康状態をもとに、婦人科医と相談して決めましょう。
更年期の抜け毛は何科を受診すればよいですか? +
まず皮膚科や抜け毛を専門に扱う外来で、脱毛のタイプを確認しましょう。更年期症状が強い場合や不正出血がある場合は、婦人科医にもあわせて相談してください。
更年期の抜け毛で血液検査は必要ですか? +
全員に必要なわけではありません。症状に応じて医師が判断し、甲状腺機能やヘモグロビン、鉄に関する指標などを調べて、ほかの原因を除外します。
50代、60代の女性でも植毛できますか? +
年齢そのものは制限になりません。抜け毛が落ち着いていて、採取部の毛包が十分にあり、手術を受けられる体調であれば評価できます。持病や服薬状況も事前に確認します。
植毛した後も治療は続ける必要がありますか? +
多くの場合は必要です。植毛では後頭部の毛包を移しますが、頭頂部にもともとある髪は細くなり続けることがあるため、術後も経過観察と治療を続けることで全体の髪の量を保ちやすくなります。
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本記事は呉文藝医師が監修・専門的なアドバイスを提供しています
呉文藝医師|萌髪植毛クリニック 院長
- ● 国際毛髪外科学会 ( ISHRS) FISHRS フェロー
- ● 米国毛髪外科専門医認定 ( ABHRS) 認定医
- ● 中華民国植毛医学会 ( TSHRS ) 現会長。